―メトロ・ヌイ。
プロトデルミスの海の中心に浮かぶ巨大都市。
その都市は6つのメトロに分かれ、
その内の一つレーメトロを中心に島中に張り巡らされている「シュート」や、
島民の仕事を監視するロボット警察部隊「ヴァキ」などにより、島は大発展を遂げていった―。
そんなメトロヌイの、レーメトロのとあるシュートの下の一角に、一体のヴァキが居た。
BIONICLET 第1話
―とは言っても、普通のヴァキとはかけ離れた者であったが―。
「あぁ〜よく寝た。今日もこうして一日が始まって過ぎて行くのか〜」
壁にもたれかかって寝ていたそれは、大きなあくびをした後立ち上がった。
「(今日こそ突き止めてやる―俺が誰なのか、四日前以前まで俺は何をして生きていたのか、
なぜ四日前以前の事を覚えていないのか、そもそも此処は何処なのか、
俺はこれから何をすればいいんだ?何をして生きていけばいいんだ?そもそも俺は生きているのか?―)」
そんな疑問を頭の中でこねくり回していた彼は、
この「故障した」ようなヴァキを不安げに見ている周りのマトラン達の目も気にせず、急にこの場を走り去っていった。
「・・・こんな下らないことばかり考えていても仕方がない・・!その内分かるかもしれない・・とにかく、今はこんな所に居たくない!」
緑色のヴァキは何かぶつぶつ言いながら思い切り走っていたが、気が付くと人気のない静かな路地に出ていた。
「やっと静かになったぞ・・・ん?」
近くで何か物音がした気がした。
「・・・どこからか声がする・・・そこの曲がり角の向こうか・・・・?」
緑色のヴァキはそっと体を乗り出し曲がり角の向こうを覗いてみた・・
そこでは3人のマトランと1体の赤いヴァキが対峙していた!
「なんでこんな所にヌーラックがいるのよ〜!しかも襲ってくるなんて!なんでよレソト!」
青いマトランが言った。
「何でって・・僕は知らないよ〜!タコス〜!何とかしてぇ〜!」黄緑のマトランは情けない声で言った。
「う〜ん・・こーなったら俺のシュートを顔面に喰らわせてやる!」
銀のマスクを着けたマトランはそう言うと、思い切りボールを蹴り上げた!
ゴッ!
鈍い音とともに、緑マトランの蹴ったボールは
見事ヌーラックの頭部に命中し、ヌーラックはその場にしゃがみこんだ。
「イェーイ!やったぜ!!すげーだろ俺のシュート!」緑マトランはガッツポーズをしながら自慢げに言った。
「さっすがタコス!やるわね」青マトランは喜びながら言った。
ギギギギギギギ・・・・
「!!」
・・・この時黄緑マトランだけは喜ばなかった・・ただ一人異変に気づいていたからだ・・・
・・バチバチバチバチ!!
壊れたヌーラックはそのレンチで緑マトランを掴むと、その壊れた体から漏れた高圧電流が一気に緑マトランに流れた!
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」緑マトランの悲痛な叫びが静かな路地にこだまする・・・
「おい!そいつを離しやがれぇ!」
彼の体はほぼ勝手に―半分自分の意思ではあったが―壊れたヌーラックの前に飛び出した。
「!!」マトラン達はヴァキが2体、しかも片方が喋るので混乱した。
ヌーラックは緑マトランを近くへ放り投げると、緑ヴァキ目掛けて突進してきた!
「・・隙がありすぎだぜ・・・!」
緑ヴァキはそういうとハイキックをヌーラックの頭部に喰らわせた!
ゴガッ!
再び鈍い音とともにヌーラックが力なく倒れ込んだ。
「す、凄げぇ・・・!」緑マトランはキックで頭がベコベコに凹んだヌーラックを見て言った。
「も、もしかしてこっちも故障したヴァキなんじゃ・・・喋ったし」黄緑が小声で言った。
「でも丁度良い壊れ方じゃない?」青も小声で答えた。
ギギギギギギィ・・・・
「シャァァァァァ!」
完全に暴走したヌーラックが立ち上がりうなり声を上げ、こちらに近づいて来る・・・!
「まだ動くの!?」青は怯えながら言った。
「や、ヤバイかも・・」緑マトランは後ずさりをしながら呟いた。
と、その時、
・・・ビィーッ ビィーッ ビィーッ ビィーッ ビィーッ・・・・
鋭いサイレンとともに設置してあった何十個もの赤いランプが点灯して回りだした!
「ま、まさか・・・!?」黄緑はランプと壁を見て言った・・
ズズズズズ・・
壁が開き、そこからは黒い影と数個の赤い目が見えていた・・!
・・ガチャ・・ガチャ・・ガチャ・・
壁の内側に作られた部屋から出てきたのは、無数の黒いヴァキであった。
その黒いヴァキを見るなり、壊れたヌーラックは襲い掛かってきた!
容赦なくディスクの集中攻撃を浴びせた!
それを受けたヌーラックは、全身が縛られたように硬直した後、完全に機能を停止し倒れた。
その素早い「作業」を見て、4人は唖然とした。
と、その間に再び壁が開き、中から角飾りを着けて一際目立つ黒いヴァキが出てきた。
「モウ大丈夫デス。安心シテ仕事ニ戻リナサイ」
飾りを着けた黒ヴァキは、棒読みでそういうと他の黒ヴァキに命令してヌーラックを処分させていた。
助けてくれたのだろう、と緑ヴァキは思ったが、マトランたちは未だに不安気な顔をしていた。
緑ヴァキはさすがにお礼くらい言ったほうがいいかと思い、話しかけてみた。
「(やっと話が通じそうなヤツが出てきたな〜)ありがとさん。で、俺の仕事は?」
沈黙。
そして、返ってきた答えは
「・・・・・破損ヴァキ発見。・・LE-23ノ可能性アリ。・・タダチニ捕獲セヨ・・」
「・・へ?」緑ヴァキはぽかんとした。
そして飾りの黒ヴァキはマトラン達の方を向くなり、「不審マトラン発見。脱走犯ノ可能性アリ。・・捕獲セヨ」
言い終わるとほぼ同時に、手下の黒ヴァキたちが動き出した!
「なんだかよく分からないが・・・逃げろ!!」
緑ヴァキはマトラン達を先に逃がすと、数体の黒いヴァキと対峙した!
性能はほぼ同等。
戦いはまさに一進一退の攻防だった。緑ヴァキはところどころに傷を負いながらも、
なんとか黒ヴァキを一体ずつ片付けていった。
ズーッ・・ズズーッ・・・ズーッ・・ズズーッ
再び壁が開き、中から不気味な機械音が鳴り響いた!
「・・・お次は何だ・・・!?」
To be continued・・